イスラエル軍がハマスに拘束されていた最後の人質の遺体の返還を確認したと発表したのを受けて、毎日新聞(松岡大地、26/1/28)は「最後の人質の遺体が収容されたことで、人質を巡る問題は大きな区切りを迎えることになった。……ガザの和平計画は今後、『第2段階』に本格的に移行する」と伝え、朝日新聞(荒ちひろ、石原孝、26/1/28)も「イスラエルは人質全員の返還を条件に……ラファ検問所の一部再開を表明しており、和平計画が進展するかが注目される」と述べた上で、「第2段階ではハマスの武装解除などの難題に道筋がつけられるかが焦点」だと説明しています。
こうしたマスメディアの見方は、イスラエルの停戦違反を無視した場合にのみ成り立ちます。実際、いずれの記事もイスラエルの停戦合意違反をほぼ完全に無視しています。
まずイスラエルは停戦発効後も連日のように攻撃を続け、住民を殺害しているというのに、マスメディアはほとんど問題にしていません。合衆国のドナルド・トランプ大統領が提案した “和平計画” では、計画に合意後、双方が即座に戦闘を停止することになっており、ガザのジェノサイド停止は国際的な関心事でもあったにも拘らず、朝日新聞の同記事はその事に全く言及していません。毎日新聞の松岡大地記者は同日の別の記事(26/1/28)で、
「イスラエル軍の攻撃は26日も続き……ガザ市で1人が死亡……昨年10月の停戦発効以降のガザ側の死者は480人以上に上る」
と伝えているにも拘らず、「イスラエルの散発的な攻撃」が続いていると伝えているだけで、停戦違反として問題視していません。「散発的な攻撃」とはイスラエルが合意を概ね守っているかの様な印象を与えるためのマスメディアのいつもの表現です。
また朝日新聞は(同)「ガザ最後の人質、遺体返還 ラファ検問所再開条件満たす」という見出しを掲げ、毎日新聞(同)は最後の人質が返還された事を受けて「イスラエルは……ラファの検問所を限定的に再開する」等と説明して、イスラエルにそうする権利があるかの様に伝えていますが、“和平計画”ではイスラエルは援助物資の搬入妨害を直ちに止めることになっていました。また人道支援物資の搬入妨害は国際法違反であり、本来、占領国のイスラエルには生活に必要な物資を十分に供給する義務があるのです。
「第2段階ではハマスの武装解除などの難題に道筋がつけられるかが焦点」(朝日、同)、「問題は、どのようなプロセスでハマスの武装解除を進めるかだ」(毎日、同)等と伝えているように、結局マスメディアにとって “和平計画” はハマスの履行だけが問題なのです。ハマスの武装解除については、イスラエルが占領を終結すればハマスは武装解除すると宣言しているにも拘らず、国際法違反であるイスラエルの占領を問題にせずにハマスの武装解除は「難題」というのも、ミスリードです。
ガザのジェノサイドをイスラルとハマスの戦闘という構図で伝えてきたマスメディアは、停戦発効後、ハマスの武装解除やイスラエル人の人質の返還等ハマス側の合意履行状況ばかりに注目し、イスラエルの停戦違反についてはほとんど問題視してきませんでした。こうしたマスメディアの協力が、ガザでジェノサイドが2年以上続いている要因の一つだと言っても過言ではありません。
マスメディアにはジェノサイドに加担しているという自覚はないのでしょうか。