Bark at Illusions Blog

── Media Watchdog Group

確かに、温室効果ガス削減目標をどのように実現するかということが重要ではあるけれども……

 合衆国政府の主催で行われた気候変動会議に合わせて、日本政府は2030年までに達成する温室効果ガスの削減目標を発表した。2013年度比で46%削減し、「さらに50%の高みに向けて挑戦」するそうだ。これまで掲げてきた数値を大幅に上回る目標だが、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5度に抑えるというパリ協定(2015年)の目標を達成するには、日本は国内だけで2013年比60%以上の削減が必要だという試算もある。従ってマスメディアが「野心的な目標」(朝日21/4/23ニュースウオッチ9、21/4/23 、など)だと強調し過ぎるのは少し問題ではないかと思うが、それでも、どのように目標を達成するかということが重要だという彼らの主張(『温室ガス削減 具体策示して変革促せ』、朝日21/4/25、社説;『温室ガスの46%削減 目標達成への戦略早急に』、毎日21/4/25、社説;ニュースウオッチ9、同 、など)も正論だろう。

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加害者や被害者の国籍によってマスメディアの人権に対する関心は変わるのか

 大日本帝国時代の性奴隷被害者らが日本政府に対して損害賠償を求めた第二次訴訟で、韓国ソウル中央地裁は、日本政府が主張する「主権免除」を認め、原告の請求を却下した。日本では「主権免除」という国際慣習法を適用した今回の判決は「世界の常識に合致したものだ」(早稲田大学・萬歳寛之教授、朝日、21/4/22)などといった評価が主流になっているが、人権が重視される最近の風潮を考えると、人道に反する重大な人権侵害に対しては「主権免除」は適用できないと判断して原告の訴えを認めた今年1月の第一次訴訟の判決から、大きく後退したと言わざるを得ない。

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日本と合衆国の言動が「台湾海峡の平和と安定」を脅かしている

 今月16日に行われた日米首脳会談の共同声明で、菅義偉総理大臣とジョー・バイデン大統領は、台湾について言及した。これは1969年以来のことで、日中国交正常化以降初めてのことだという。共同声明で、日米両政府は「経済的なもの及び他の方法による威圧の行使を含む、ルールに基づく国際秩序に合致しない中国の行動について懸念を共有」すると述べるなど、中国を名指しして非難し、「地域の平和及び安定を維持するための抑止の重要性」を確認。そして台湾に関しては「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と述べた。

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マスメディアはなぜ国際社会が求める知的所有権の一時放棄に反対している合衆国や日本政府を問題にしないのか

 日本でもようやく一般向けの新型コロナウィルスワクチンの接種が始まった。日本のワクチン接種は欧米や中国などに比べて遅れを取っていることから、「国産ワクチンの遅れ 中長期的な戦略が必要だ」(毎日、21/4/8、社説)、「ワクチン確保 中長期見据えた戦略を」(朝日、21/4/13、社説)といった声も上がっている。国家の安全保障の観点から、国産ワクチンの供給体制の重要性を訴えたい気持ちはわかるが、とりわけ今問題にすべきは、世界的に不足しているワクチンの供給量をいかにして増やすかということだ。

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トリチウム汚染水についての「国民の理解」が広がれば……

 東京電力福島第1原子力発電所でたまり続けるトリチウムを含む放射能汚染水の処理について、日本政府は希釈して海に放出する方針を固めた。東電や国家の負担軽減を最優先に考えた結果だろう。放射性物質トリチウムについては人体に有害な影響を与える科学的根拠が示されている。また地元漁業者などを中心に反対の声も強く、安全面からも民主主義の観点からもあり得ない判断だ。しかしマスメディアが懸念しているのは “風評被害” だけで、トリチウムについては人体にほとんど影響がないかのような印象を与え、問題は政府の説明不足、あるいは「国民の理解」が不足していることだと説明している。

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