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── Media Watchdog Group

イスラエルのジェノサイドに背を向けるマスメディアはジェノサイドの共犯者だ

 パレスチナのガザやヨルダン川西岸に対するイスラエルの容赦のない攻撃は止むことなく依然として続いているが、マスメディアがそれについて伝えることは少なくなった。このところの国際ニュースと言えば、シリアのアサド政権崩壊や韓国の戒厳令騒ぎばかりだ。

 大手メディアの記者も、そのことを認識しているようで、朝日新聞エルサレム支局長の高久潤(24/12/27)は同紙のガザ駐在通信員の姪であるサラという名前の女の子が空爆で負傷したことを伝える記事の中で、次のように書いている。

「死者約4万5千人、負傷者10万5千人以上。戦闘から2回目の冬を迎えたガザでは、『死』はそれだけではニュースにならなくなっている。ガザの人たちはそのことをよく知っているし、深く傷ついている。だから私は今回、記事にはならないはずの負傷したサラちゃんを新聞紙面で紹介したい」

 イスラエルの攻撃によって殺されたパレスチナ人の事をニュースにするかしないかは、記者や報道機関の判断次第だろう。例えば、合衆国の独立系メディア、デモクラシー・ナウは今でも連日のようにパレスチナに関するニュースを伝え続けている。パレスチナに対するイスラエルのジェノサイドが世界の日常になってしてしまっていることについては、マスメディアにも大きな責任がある。それに、最近のガザで起きていることは、ニュース価値のない出来事ばかりだろうか。
 試しにガザでこの1か月間に何が起こっていたかを、デモクラシー・ナウが伝えたニュースを基に、簡単に振り返ってみよう。
 デモクラシー・ナウ(24/12/2)によると、イスラエル軍は11月29日にガザ北部にあるカマル・アドワン病院で働く医師を無人機攻撃で殺害し、翌30日には、ガザで食糧支援活動を行っていたガザ・スープ・キッチンの共同創設者とワールド・セントラル・キッチンの職員、それにセーブ・ザ・チルドレンの職員とガザのジャーナリストをそれぞれ空爆などにより殺害した。
 12月4日、イスラエル軍は難民キャンプの食料配給センターを空爆するなどして子どもを含む5人を殺害(Democracy Now、24/12/4)。
 12月6日、イスラエル軍はカマル・アドワン病院を再び激しく攻撃し、4人の医師を含む多くの市民を殺害した(Democracy Now、24/12/6)。
 12月8日、度重なるイスラエル軍の攻撃によって、カマル・アドワン病院の電気、酸素、水の供給が遮断された(Democracy Now、24/12/9)。またイスラエル軍はガザ北部のインドネシア病院を攻撃して患者を負傷させ、病院の一部を損壊。同病院のマルワン・アル・スルタン院長は国際機関に医療施設の安全確保の支援を要請した(Democracy Now、24//12/10)。
 12月9日、イスラエル軍は南部ラファで「小麦粉を買うため」に並んでいた人々の列を空爆し、少なくとも10人を殺害(Democracy Now、24/12/9)。
 12月12日、イスラエル軍はガザ南部のハンユニスで再び人道支援物資を輸送する車列を攻撃して少なくとも13人を殺害し(Democracy Now、24/12/12)、北部ではイスラエルの狙撃兵がカマル・アドワン病の整形外科医を殺害した(Democracy Now、24/12/12)。
 12月17日、イスラエル軍は再びカマル・アドワン病院を攻撃し、発電機を破壊(Democracy Now、24/12/17)。
  12月22日、イスラエル軍は援助物資を運ぶ車列を無人機で攻撃し、警備員4人を殺害した(Democracy Now、24/12/24)。
 12月24日、イスラエル軍はガザ北部のアルアウダ病院とカマルアドワン病院を攻撃し、インドネシア病院では治療を受けていた患者を強制退去させた(Democracy Now、24/12/24)。
 12月26日、イスラエル軍は「press(報道)」と明確に表示された車を空爆し、パレスチナ人ジャーナリスト5人を殺害した(Democracy Now、24/12/26)。
 12月27日、イスラエル軍はカマル・アドワン病院を攻撃し、医療従事者5人を含む50人を殺害し、患者ら350人を強制退去させ(Democracy Now、24/12/27)、同病院のホッサム・アブ・サフィヤ院長や患者らを拘束した(Democracy Now、24/12/30)。この攻撃でカマル・アドワン病院は病院としての機能を停止した。
 12月28日、イスラエル軍はガザ市のアルワファ病院とアフリ病院を攻撃し、複数の死傷者を出した(Democracy Now、24/12/30)。
 この他にも、イスラエル軍は同軍が指定した「安全地帯」を含む難民キャンプや住宅地を頻繁に攻撃し、大半が女性と子どもである多くの市民を殺害した(Democracy Now、24/12/3、24/12/9、24/12/11、24/12/13、24/12/17、24/12/18、24/12//19、24/12/27など)。
 こうした出来事を、日本のマスメディアはどの位伝えていただろう。公共放送を自負するNHKの夜のメインニュースであるニュース7ニュースウオッチ9は、この一か月間、パレスチナ情勢について全く伝えていない(12月20日現在)。朝日新聞(今泉奏、24/12/2)はイスラエル軍がワールド・セントラル・キッチンとセーブ・ザ・チルドレンの職員を殺害したことを紙面記事で短く伝えているが、その記事の見出しは「ガザの人道支援を一部停止 UNRWA、相次ぐ略奪で」。人道支援スタッフ殺害のニュースは本題ではなく、UNRWAの活動停止のニュースの付録としてだ(しかも、記事の本文ではUNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長がイスラエルに対して人道支援活動の安全を保証し、支援者への攻撃をやめるよう要請していることを伝えているにもかかわらず、見出しはUNRWAの活動停止はガザ市民の妨害によってのみもたらされたかのような印象を与えている)。
 イスラエル軍が繰り返し病院を攻撃したり、人道支援を行う車列を空爆したり、避難民やジャーナリストを標的にしているという事実は、マスメディアにとってニュース価値のないことなのだろうか。イスラエルによって故意に殺害された医療従事者や患者、人道支援を行う人々、ガザの状況を命懸けで伝えているパレスチナ人ジャーナリスト、イスラエル軍が指定する「安全地帯」に避難していた女性や子どもの死は、高久潤が言うような「それだけではニュースにならな」い「死」だろうか。
 今月に入って、アムネスティ・インターナショナルイスラエルがガザでジェノサイドを行っていると結論づける報告書を発表し、ヒューマン・ライツ・ウォッチイスラエルパレスチナ人の絶滅を意図してガザ市民の水へのアクセスを奪っていることを指摘する報告書を発表、また国境なき医師団もガザにおける民族浄化の明らかな兆候を指摘する報告書を発表しているが、日本のマスメディアはこれらの報告についてもほとんど伝えていない。マスメディアが好んで使う「イスラム組織ハマスイスラエルの戦闘」或いは「イスラエルによる対テロ戦争」という構図が成立しなくなるからだろうか。
 イスラエルがガザで行っていることを見れば、それがジェノサイドであることは明白である。しかもそれは合衆国政府の全面的な支援と日本や欧州の各国政府(アイルランドなど一部を除く)の黙認或いは支持によって可能になっているのだから、日本や欧米のマスメディアにはジェノサイドを止めるためにイスラエルによるガザの大量殺戮を伝え続ける責務があるだろう。

 ベツレヘムのムンター・アイザック牧師は福音ルーテル・クリスマス教会で行われた今年のクリスマスの礼拝で次のように述べている。

「あなた方がジェノサイドを否定し、無視し、ジェノサイドという言葉を使うことを控える時、それは多くのことを物語っています。……それは何年も私たちに国際法や人権について説教してきたあなた方の偽善を、正に露わにしています。……それはあなた方が私たちパレスチナ人をどのように見ているかについて多くを物語っています。それはあなた方の道徳的・倫理的基準について多く物語っています。あなた方が真実から目を背け、抑圧をありのままに名指しすることを拒否するとき、それはあなた方の人柄を全て物語っています」

 この言葉は正に日本のマスメディアにも向けられたものだろう。マスメディアで働く人たちは、自分たちが偽善者であることを自覚しなければならない。パレスチナ人に対するイスラエルのジェノサイドをジェノサイドと呼ばずに「イスラム組織ハマスイスラエルの戦闘」として伝え、或いはガザのニュースを伝えること自体を避けることで、自分たちがジェノサイドの共犯者になっているということに気づかなければならない。