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── Media Watchdog Group

沖縄県知事選挙の結果を無視するNHK

 NHKの主要ニュース番組は、沖縄県知事選の結果を無視した。NHKニュース7は選挙当日までは沖縄県知事選のニュースを何度か伝えていたが、投票日の翌日、辺野古新基地建設反対を掲げる玉城デニー知事が再選したことを伝えるのを怠った。ニュースウオッチ9(22/9/12)も、番組の終わりの方で、その日の出来事を短くまとめたニュースの中で、「米軍基地 辺野古移設 岸田首相『理解得るため努力』」というニュースタイトルの字幕と共に短く伝えただけだ。しかもその内容はとても偏向しており、問題がある。

 ニュースウオッチ9は、

「昨日投票が行われた沖縄県知事選挙で、アメリカ軍普天間基地の名護市辺野古への移設反対を訴えた現職の玉城知事が再選しました。これについて岸田総理大臣は、……辺野古への移設は沖縄県民の理解をいただいて進めているが、今後もその努力をしていかなければいけないと述べました」

と伝えた後、岸田文雄と会談した森山裕選挙対策委員長の次の談話を紹介してニュースを終えている。

「選挙の結果としては、やはり沖縄県民の皆さんの関心が経済の面にもかなり強いものがありますねという話は致しました。沖縄の経済についても、総理、非常にご心配をしておられる」

 ニュースのタイトルからしてそうなのだが、基地建設反対の玉城デニーが再選したことは二の次になっている。まるで辺野古新基地建設はもう変更不可で沖縄の民意など全く関係ないかのように、ニュースウオッチ9は日本政府の見解を一方的に伝えるだけで、選挙に勝った玉城デニーの声も、沖縄県民の声も全く伝えていない。
 果たして、「辺野古への移設は沖縄県民の理解をいただいて進めている」と言う岸田文雄の見方は本当だろうか。世論調査では基地問題よりも経済や雇用を重視する人が多かったのは事実だが、「選挙の結果として」沖縄県民の関心が「経済の面にもかなり強いものがありますね」という森山裕の評価は適切だろうか。
 ニュースウオッチ9はこうした疑問を呈することもなく、無批判に政府の見方だけを伝えて、沖縄の声を無視した。

 沖縄県知事選挙は単なる地方選挙ではない。日本政府は “日米同盟” を安全保障の基軸と考えているが、在日米軍施設(面積)の70%が沖縄にあることから、沖縄県知事選の結果は日本の安全保障政策にも関わる。ニュースウオッチ9(22/8/25)も、「基地問題……国の安全保障政策にも影響を与える可能性がある今回の選挙」と述べていた。
 それにもかかわらず、辺野古新基地建設反対の現職知事が、公約で基地建設容認を明言した政権与党推薦の候補者を6万4000票余りの大差で破った重大な選挙結果を無視、あるいは歪めて伝えるというのはどういうことか。

 NHKは今月9日、放送倫理・番組向上機構BPO)がNHK放送のドキュメンタリー番組について「重大な放送倫理違反」があったと結論付ける意見書を公表した際に、

「指摘を真摯に受け止めます。取材や制作のあらゆる段階で、真実に迫ろうとする放送の基本的な姿勢を再確認し、現在進めている再発防止策を着実に実行して、視聴者の皆様の信頼に応えられる番組を取材・制作してまいります」

と述べたばかりだ。
 言った端から、なんやこれは。