Bark at Illusions Blog

── Media Watchdog Group

NHKが「脱炭素化に向けた取り組みを主導していく強い意志」を国内外に示したと解説する岸田文雄のCOP26の演説は化石賞

 岸田文雄総理大臣は、「気候変動という人類共通の課題」に日本が「総力を挙げて取り組」む「決意」を伝えるために、国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の開催地、スコットランドグラスゴーを訪れ、演説した。

 事前にNHKが、岸田文雄は「脱炭素社会の実現に向けて世界を牽引していく決意を示すことにしています」(NHKニュース7、21/11/2)、「脱炭素社会の実現に向けて日本の総力を挙げて取り組む姿勢を強調するものと見られます」(ニュースウオッチ9、21/11/2)と説明していた岸田文雄のCOP26 での演説は、しかしながら、水素やアンモニアを利用して「既存の火力発電をゼロエミッション化し、活用する」と述べたことが環境NGOから特に問題視され、地球温暖化対策に消極的な国家に贈られる「化石賞」を日本が受賞する要因となってしまった。水素やアンモニアは、ほとんどが化石燃料から生成されており、地球温暖化の解決策にはならない。日本が未だに廃止を明言していない石炭火力発電の延命策だと受け止められた。
 NHKはCOP26の期間中、今回の会議の焦点は各国が「世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える」ことで「一致」できるかどうかだなどと繰り返し伝えていたが(例:ニュースウオッチ9、21/11/2;ニュース7、21/11/6)、平均気温の上昇を1.5度以下に抑えることを目指すことは2015年のCOP21で確認済みで、今回の会議で世界中の多くの市民から求められていたのは、その実現に向けて各国政府が具体的な行動を示すこと、特に石炭を含む化石燃料からの脱却に向けた道筋をつけることだった。それだけに、日本が石炭火力発電に固執することを示した岸田文雄の演説が化石賞を受賞したのは、当然のことと言えるだろう。

 ところが、ニュースウオッチ9NHK政治部・大谷暁、同)は岸田文雄の演説を中継で伝えた後でさえ、

「脱炭素化に向けた取り組みを主導していく強い意志を、国内外に示す狙いがあったと見られます」

などと解説している。

 NHKの主要ニュース番組であるニュース7ニュースウオッチ9は、これまでのところ、日本の化石賞受賞について伝えていない。
 岸田文雄の演説に対するNGOの評価とNHKの評価の違い。それは、人類が暮らせる地球環境を守ろうとしているのか、時の政権を守ろうとしているのか。そこにあるのではないだろうか。