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── Media Watchdog Group

制裁緩和やアフガニスタンの資産凍結解除を求める国際機関やNGOの声を無視するマスメディア

 米軍のアフガニスタン撤退とタリバンの政権奪取から1年が過ぎた。1年前に予測された通り、経済制裁と合衆国政府によるアフガニスタン中央銀行の資産凍結によって、アフガニスタンは深刻な社会的・経済的危機に陥っている。国連によると、アフガニスタンの約1900万人が深刻な食料不安に直面しており、そのうち600万人は飢餓の危険にさらされている。アフガニスタンの惨状を早急に緩和するには、制裁緩和やアフガニスタン資産の凍結解除が必要だ。

 今年3月にアフガニスタンのカブールを訪れた国連人権高等弁務官事務所のミシェル・バチェレ高等弁務官(当時)は次のように述べている(OHCHR、22/3/11)。

経済制裁と資産凍結の破滅的な影響と適切に言われているものに早急に対処することも極めて重要です。私は国際社会に対して、既に取られた措置にとどまらず、経済を活性化し、開発を支援し、不必要な人間の苦しみを軽減するために、制裁を緩和し、資産の凍結を解除するよう強く求めます。さらなる資金が直ちに利用可能にならない限り、何百万人ものアフガニスタン人が不必要に苦しみ続けることになります」

 経済制裁と資産凍結の影響で、アフガニスタンの経済システムは完全に破綻している。現金の不足で公務員や従業員への給料の支払いが滞り、市民は銀行に預けている金を下ろすこともできない。また医療活動や食料支援など、現地での人道支援活動にも支障をきたしている。
 アフガニスタン市民の生命を救うために、制裁緩和と資産凍結解除は今すぐにでも行われなければならない。特に、合衆国のバイデン政権によるアフガニスタン中央銀行の資産凍結は全く正当性がない。アフガニスタン中央銀行の資産はアフガニスタンのものだ。ジョー・バイデン大統領は合衆国国内の銀行に預けられているアフガニスタン中央銀行の資産70億ドルの半分をアフガニスタン人道支援に利用し、残りの半分を合衆国同時多発テロ事件(2001年)の被害者遺族への「賠償」に充てようとしているが、バイデンにアフガニスタン中央銀行の資産の使い道を決める権限はない。タリバン政権の政策の如何にかかわらず、アフガニスタンの資産はアフガニスタンに返却されなければならない。そのことによって、アフガニスタンの市民は現金を手にし、必要な生活物資を購入することもできるようになるだろう。
 制裁緩和や資産凍結の解除は、バチェレに限らず、国連のアントニオ・グテレス事務総長や、人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチなどのNGOも要求している。

 ところが、日本のマスメディアは、米軍の撤退とタリバン復権から1年を機に特集を組むなどしてアフガニスタンの窮状を伝えているが、その解決策として制裁緩和や資産凍結解除の必要性を訴えているものは、ほとんど皆無だ。稀に経済危機の要因としてアフガニスタン中央銀行の資産凍結に言及していたとしも、それを解除すべきべきとまでは言わない(例:朝日22/7/1722//8/16など)。

 もし、日本のマスメディアが本当にアフガニスタンの惨状を気にかけているのなら、アフガニスタンの人道危機を緩和する上で最も効果的で必要な措置として、国際機関やNGOなどが制裁緩和やアフガニスタンの資産凍結解除を求めていることも伝えなければならない。