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── Media Watchdog Group

国際法を無視した他国領土でのタリバン指導者暗殺をバイデンの成果として伝えるマスメディア

 合衆国政府は、テロ組織アルカイダの指導者であるアイマン・ザワヒリ氏をアフガニスタンのカブールで無人機(ドローン)による空爆により殺害したと発表した。他国の領土における超法規的な殺人は明白な国際法違反だが、マスメディアにはそのような認識は全くないようだ。

 マスメディアは、米軍が昨年8月にカブールの一般市民をテロリストと間違えてドローン攻撃で殺害した経緯があるため、バイデン政権は今回の攻撃では市民に犠牲が出ないように「慎重を期した」などと説明して、国際法違反を問うよりもバイデンの人道的な配慮があったことを強調し(朝日22/8/3毎日22/8/3)、

「バイデン政権にとって、対テロ戦争で久々の大きな成果となった」毎日22/8/3
ザワヒリ容疑者の殺害はバイデン氏にとって大きな成果となる」日経22/8/3
などと、肯定的にニュースを伝えている。
 テロリストのザワヒリを殺害したという合衆国政府の発表を全く疑おうともせず、ジョー・バイデン大統領が自身の命令で行われた犯罪行為について、

「もし合衆国の脅威となるなら、どれだけ時間がかかろうとも、どこに隠れていようとも、見つけ出して排除する」、
「私はアフガニスタンやその他の地域で効果的な対テロ作戦を実行すると米国民に約束した。それをなし遂げた」

などと勝ち誇ったように演説したことに疑問を呈することもない。それどころか、ザワヒリアフガニスタンに滞在していたことが判明したことで「タリバンアルカイダのつながりが改めて浮き彫りになった」(朝日22/8/3)とか、「タリバンアルカイダが引き続き連携している疑いが浮上。タリバンに対する国際社会の見方は厳しさを増しそうだ」(毎日22/8/3)などと述べて、主権を侵害されたアフガニスタン側を非難している有様だ。

 まず合衆国のドローン攻撃について言うと、合衆国の元諜報アナリストのダニエル・ヘイルによると、米軍のドローン攻撃による犠牲者の9割は一般市民だそうだ(INTERCEPT21/11/5)。従って、マスメディアは殺害されたのはザワヒリだと決めつけているが、実際にはそうではない可能性もある。
 また改めて説明する必要もないことだが、テロの容疑者であろうとなかろうと、他国の領土での武力行使も超法規的殺人も国際法違反だ。合衆国であれ、他のどの国家であれ、自分たちが「容疑者」と判断した人物を世界中の何処ででも殺害できる権利など無い。

 今、マスメディアはウクライナを侵略したロシア厳しく糾弾している。その同じマスメディアが、「合衆国の脅威」となるなら、たとえそれが他国の領土であろうと軍事力を用いて「排除」する権利が合衆国にはあると、本気で考えているのだろうか。