Bark at Illusions Blog

── Media Watchdog Group

「平和の少女像」に込められている思いは何か

 愛知県で開催されている国際芸術祭の企画展、「表現の不自由展・その後」が中止に追い込まれた事件は、日本社会のいくつかの問題点を改めて示した。ひとつは、言うまでもなく日本の表現の自由の現状についてだ。かつてローザ・ルクセンブルクが語ったように「自由とは常に、異なった考え方をする者にとっての自由である」。気に入らない作品が展示されているという理由で展覧会を中止に追い込もうとする社会は、自由ではない。展覧会に公金が使われていながら日本政府の意にそぐわない展示物があったことを問題にする人もいるが、権力者にとって好ましい意見を言うだけの自由なら、どんな独裁的な社会にも存在する。民主国家なら、公的機関こそ、多様な意見や表現を保障する義務がある。もうひとつ、この事件が浮き彫りにしたこととして問題にしたいのは、戦時の性奴隷を模した少女像への日本人の無理解だ。

続きを読む

日韓の対立で問題にすべきは、強制労働の被害者に対する日本政府の対応だ

 「徴用工」を巡る問題で日韓の対立がエスカレートしている。韓国への輸出規制を強化した日本に対して韓国政府は対抗措置を発表、韓国では日本製品不買運動も広がっている。しかし対立の発端となった「徴用工」を巡る昨年の韓国大法院(最高裁)の判決以降の経緯を振り返れば、問題の責任の大半は日本側にあるのは明らかだ。日本政府も認めている通り、日韓請求権協定は賠償ではなくて経済協力であり(例えば、1965年11月19日の参議院本会議での外務大臣椎名悦三郎の答弁)、国家間の条約である同協定で個人の請求権を消滅させることはできない(例えば、1991年8月27日の参議院予算委員会での外務省条約局長・柳井俊二や、2018年11月14日の衆議院外務委員会での外務大臣河野太郎の答弁)。日本政府はそれを承知で、日韓請求権協定で問題は解決済みだと嘘を言い、日本企業に元「徴用工」への賠償を命じた韓国大法院の判決は「国際法違反」だと主張して、民主国家として司法の判断を尊重する韓国政府への腹いせに、輸出規制強化という経済報復を行った。批判の矛先は日本政府に向かうべきだが、日本のマスメディアは韓国政府に問題の責任を押し付けている。

続きを読む

NHKの受信料を拒否する十分な理由が、我ら市民にはある

 7月の参議院選挙で「NHKをぶっ壊す」ことを唯一の公約に掲げる「NHKから国民を守る党」が議席を獲得した。具体的な政策としては、料金を支払った人だけがNHKを視聴できる制度(スクランブル放送)の導入を目指しており、NHKの受信料不払いも呼びかけている。当のNHKは7月30日、「受信料と公共放送についてご理解いただくために」と題する文書を自身のウェブサイトに掲載し、「『受信料を支払わなくてもいい』と公然と言うことは、法律違反を勧めること」になると述べて、「明らかな違法行為など」に対して「厳しく対処」すると警告した。NHKは受信料不払いが法律違反であるかのように言っているが、放送法第64条は、テレビなどを設置した者に対してNHKとの受信契約締結を義務づけているだけで、受信料の支払いについては義務化していない。NHKは脅しともとれるこのような文書を出す前に、今回の選挙結果を重く受け止め、自身の放送内容が公共放送としてふさわしいかどうか検証すべきではないか。NHKの受信料の支払い拒否は正当な行為であり、そうするだけの十分な理由が市民にはある。

続きを読む

ジャーナリストなら「徴用工」問題の基本的な事実を無視せず伝えろ

 毎日新聞(19/7/11)に歴史修正主義者のコラムが掲載されている。国家公務員共済組合連合会理事長の松元崇氏は、かつて自身が社外取締役を務めた三菱マテリアル株主総会で聞いた、「韓国の元徴用工の人たち」は日本の炭鉱で働いていたことを「誇りにしていた」という話を根拠に、「徴用工」問題は「事実とかけ離れた虚像」だと主張して、「事実を踏まえた歴史認識」に基づく日韓の対話を求めている。炭鉱で働いていたことを「誇り」にしている「元徴用工」の人がいたとしても、日本政府が大日本帝国時代に植民地の人々に対して強制労働をさせたという事実を否定することはできないのだから、松元氏こそ「事実を踏まえた歴史認識」が必要だが、人から聞いた話だけを根拠に松元氏が「徴用工」問題を否定するコラムを書くのは自由だ。否定できない事実をどれだけ並べても、合理的な判断をしない人間というのはいつの時代にもいるものだが、そんな彼らにも何かを言う権利はある。問題は、歴史に対して正直に向き合わなければならないマスメディアまでもが「徴用工」問題の基本的な事実を無視してニュースを伝え、韓国に対する日本政府の恥知らずな対応を支持していること。そしてその結果として、日本社会全体が日本政府や松元氏のような歴史修正主義者の主張が間違っているということに気づかずにいることだ。

続きを読む

選挙が済んだら、デモに行こう

 7月21日に行われた参議院選挙は、議席過半数を獲得した与党の勝利で終わった。しかし選挙が終わったからと言って、市民の政治的役割が終わるわけではない。市民は選挙以外にも、デモや座り込みなどによる直接行動などで政治に参加することができる。選挙だけでは政治や社会は変えられない。市民の声を政治に反映させるためには、むしろデモなどによる直接行動が効果的だ。6月に注目を浴びた香港の抗議デモもそのことを示している。

続きを読む