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Bark at Illusions Blog

── Media Watchdog Group

NHKのニュースにならなかった重要なニュース

 注目が集まった日米首脳会談以外にも、先週、大きなニュースがふたつあった。ひとつは、南スーダンに派遣している陸上自衛隊の日報に関するニュース。もうひとつは、「テロ等準備罪」(共謀罪)に関する審議を巡って、金田勝年法務大臣が、国会での「質問封じ」と受け取れる文書を発表したこと。野党や市民が稲田朋美防衛大臣と金田法務大臣の辞任を求める事態となっているが、NHKニュース7ニュースウォッチ9は、これらのニュースをほとんど取り上げていない。

  防衛省は、2月7日、ジャーナリストからの情報開示請求に対し、「廃棄した」として不開示決定をしていた陸上自衛隊南スーダンへのPKO派遣部隊の日報について、統合幕僚監部が電子データとして保管していたと明らかにした。
 公表された日報は、昨年7月、首都のジュバで、

「政府軍と反政府勢力(前副大統領派)との間で『戦闘が生起』と記載。さらに『宿営地周辺での射撃事案に伴う流れ弾への巻き込まれ、市内での突発的な戦闘への巻き込まれに注意が必要』と報告…日報に基づき上部部隊の中央即応集団が…作成した報告書にも『戦車や迫撃砲を使用した激しい戦闘が確認される等、緊張は継続』と記されていた」毎日17/2/8)

 政府は、陸上自衛隊が派遣されるジュバでは「戦闘行為」は発生していないと主張し、昨年11月、駆け付け警護など新たな任務を付与した部隊を南スーダンに派遣したが、「戦闘」が発生していれば、憲法9条や、自衛隊憲法9条に違反する武力行使を避けるために規定したPKO参加5原則に違反することになる。
 また、ジャーナリストの布施祐仁氏が公開請求をしたのは、昨年の9月30日。南スーダンへ派遣する自衛隊への新たな任務付与については、野党4党や国民の過半数が反対しており(反対56%、賛成28%、朝日16/11/22)、この文書が公表されていれば、政府は派遣部隊に新たな任務を付与できなかったかもしれない。このため、政府は故意に日報を隠していたのではないかと疑われる。
 さらに、稲田防衛大臣は、日報に記載されていた「戦闘」という表現について、「国会答弁する場合には、憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」と、憲法9条との整合性を図るために、政府は「戦闘」という言葉を避けていると受け取れる答弁[i]をするなど、ニュースとして伝えるに十分な価値のある問題と考えられる。

 金田法務大臣の件については、国会では、法案の必要性や条約との整合性について、金田大臣がまともな答弁を行えず、審議が何度も中断する事態となっていたが、そんな中、大臣は、「国会提出後に議論すべきだ」と記した文書を発表した。
 大臣は、文書をすぐに撤回して謝罪したものの、「国会での質問封じ」と受け取れるこのような行為に対して、批判は免れない。

 共謀罪は、犯罪の実行行為がなくても、相談や計画をしただけで処罰の対象となるため、捜査機関の職権乱用や恣意的な運用による人権侵害が懸念される、非常に危険な法案である。
 政府は、「一般の人が対象になることはない」と繰り返すが、「テロ組織」の定義すら政府は説明できていない(赤旗17/2/6)。
 また、政府は、

共謀罪をめぐる捜査の中で、電話やメールなどの盗聴を可能にした『通信傍受法』を使うことを将来的に検討することも認めました。共謀罪の創設で、犯罪に関係のない国民の人権・プライバシーが侵される監視社会への道が一層強まることは否定できません」赤旗、同)

 国家権力が、一般市民を監視し、政府に都合の悪い人、政府の政策に批判的な人や反対する人を任意で逮捕できるような社会は、民主主義社会ではない。

 このような大臣のもと、国民の自由や人権、民主主義への重大な脅威となりかねない法案を審議して大丈夫なのか、問題視されるべき重要なニュースと言える。

 ニュース7は、これまでのところ、一度もこれらのニュースを取り上げていない[ii]ニュースウォッチ9は、自衛隊の日報に関するニュースについては、その日の出来事を短くまとめたニュースの中のひとつとして2度(17/2/8、9)、国会のニュースの中のひとつとして1度(17/2/14)、金田法務大臣の「質問封じ」のニュースに関しては、文部科学省天下りに関する集中審議について伝える中で、その他の国会のニュースとして(17/2/7)、いずれもキャスターのコメントなしで、短く伝えただけだった。

 憲法や、派遣されている自衛隊員の安全、あるいは国民の自由や人権、民主主義に関わる問題であり、国民にとって重要と判断できるこれらのニュースは、NHKにとっては、ニュース価値がないようだ。

 

[i] 稲田防衛大臣は、「法的な意味での戦闘行為ではない」、「国際的な武力紛争の一環として行われる…戦闘行為が行われていたとは評価できず、PKO5原則は守られていた」と説明している。「武力紛争」が発生していれば、PKO法に反するが、政府は「武力紛争」を「国家または国家に準ずる組織間の紛争の一環として行われる人を殺傷し、または物を破壊する行為」と解釈しているからだ。
 しかし、PKO法に、「武力紛争」の定義はなく、政府の「武力紛争」や「戦闘行為」についてもあいまいだ。(以下の衆議院のウェブサイトを参照:武力紛争と戦闘行為との関係に関する質問主意書http://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a192145.htm)及び、衆議院議員緒方林太郎君提出武力紛争と戦闘行為との関係に関する質問に対する答弁書http://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b192145.htm))

 また、「国家に準ずる組織」も定義が曖昧で、政府に恣意的な判断を許すことになる。これでは、いくら大規模な戦闘が起きても、政府が「国家または国家に準ずる組織」と判断しなければ、「法的な戦闘行為」は起こっていないことになる。

 PKO法で、PKO参加5原則(紛争当事者間の停戦合意、紛争当事者のPKO受け入れ同意、PKOの中立的立場の厳守、以上の原則のいずれかが崩れた場合の自衛隊の撤収、必要最小限の武器使用)が定められているが、南スーダンでは、紛争当事者の前副大統領が「和平合意は崩壊している」として「徹底抗戦」を宣言していること(「紛争当事者間の停戦合意」が守られていない)や、国連安全保障理事会が8月に「文民保護」を理由に事実上の先制攻撃の権限を与えたPKO部隊の増派を決めたこと(「中立的立場」に反する)などから、PKO参加5原則は維持されていないとして、当初から、新たな任務を付与した自衛隊の派遣について反対の声は強かった。
 さらに、最近では、政府軍が「恒常的」にPKO活動を妨害している(紛争当事者の受け入れ同意がない)という報告もある(赤旗16/12/8)。また、国連は、2月7日、「内戦状態が続く南スーダンから最近1カ月で5万人以上が隣国ウガンダに逃れたと明らかにし」、再度「民族間の対立が『ジェノサイド(大虐殺)に発展する恐れが依然としてつきまとっている』と警告している」(毎日17/2/9)。
 政府は自衛隊南スーダン派遣を見直すべきだ。 

[ii] ニュース7(17/2/15)は、事案発生から1週間以上たってからようやく、1日の出来事を短くまとめたニュースのひとつとして、これらのニュースに関連したニュースを伝えた。4野党が防衛大臣法務大臣の辞任を求めることで一致したことを主に伝えるもので、次のように伝えている。

民進党共産党など野党4党の国会対策委員長が会談し、稲田防衛大臣は、南スーダンPKO活動に関する正確な情報を国民に伝えておらず、国の安全保障を委ねることはできないとして、辞任を求めていくことで一致しました。また金田法務大臣についても、共謀罪の構成要件を厳しくして、テロ等準備罪を新設する必要性を説明していないとして、引き続き辞任を迫っていくことを確認しました」

 防衛大臣が「南スーダンPKO活動に関する正確な情報を国民に伝えて」いない、というのは、随分控えめな表現だ。法務大臣の資質についても、簡潔過ぎて、事の重大さを伝えているニュースとは言えない。