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── Media Watchdog Group

自衛隊の日報問題を矮小化して伝えるニュース7

 防衛省が「廃棄した」としていた南スーダンに派遣している陸上自衛隊の日報が電子データで保管されていた問題について、NHKニュース7(17/2/17)は、問題を矮小化して伝えている。

  ニュース7は、国会での審議を伝えるニュース項目の中で、「テロ等準備罪」(共謀罪)に関する審議を伝えた後、

「一方、防衛省が破棄したとしていた南スーダンでのPKO活動に関する自衛隊の日報が見つかったことに関する質問も出ました」(キャスター、武田真一

として、

「情報開示ひとつをとっても誠実さが疑われる……防衛大臣が交替しているというこのこと自体が……結果的には問題だった」

 のではないかという、日本維新の会議員吉田豊史の質問を取り上げ、防衛大臣稲田朋美と、内閣総理大臣安倍晋三の次の答弁を紹介してニュースを終えている。

稲田朋美「我が国の防衛、領土、領海、領空、国民の生命、身体、財産、しっかり守っていくべく頑張ってまいりたいと思っています」

安倍晋三「日報等のご指摘もあるわけでございますが、しっかりとですね、この事態に対して対処できると……私は信頼している」

 ニュース7は、稲田朋美の大臣としての資質に問題の焦点を当てているが、この問題は、単に「破棄したとしていた……自衛隊の日報が見つかった」という問題ではない。連日のように新聞でも取り上げられている通り、日報には、南スーダンの首都ジュバの状況について、「戦闘」という言葉が記載されていた。
 政府は、ジュバでは「戦闘行為」は発生していないと主張して、昨年11月、駆け付け警護などの新たな任務を付与した交替部隊を南スーダンに派遣したが、「戦闘」が発生していれば、憲法9条や、自衛隊憲法9条に違反する武力行使を避けるために規定したPKO参加5原則に違反することになる。
 また、問題の日報について、ジャーナリストの布施祐仁氏が情報開示をしたのが昨年の9月30日。防衛省は、請求の開示期限を延長した後、昨年12月2日に「廃棄した」として、日報の不開示決定をしているが、政府は日報を意図的に隠蔽していたのではないかとの疑いもある。国会では同時、自衛隊への新たな任務の付与が議論されていた。南スーダンへ派遣する自衛隊への新たな任務付与については、野党4党や国民の過半数が反対しており(反対56%、賛成28%、朝日16/11/22)、この文書が公表されていれば、新任務を付与できなかった可能性がある。

 稲田防衛大臣については、彼女の「国会答弁する場合には、憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」という国会答弁が問題視されている。政府は、憲法9条との整合性を図るために「戦闘」という言葉を避けていると、野党や市民は受け取っている。
 また、防衛相が日報の電子データの発見について、大臣への報告が1か月間遅れたことなどから、シビリアンコントロールの問題も指摘されている。
 ニュース7が紹介した、稲田が大臣として「頑張ってまい」るとか、安倍晋三が稲田を「信頼している」という答弁は、どうでもいいことだ。

 ニュース7は、防衛相が2月7日に日報を公表してから1週間以上たって、ようやく「日報」に言及してこの問題を伝えたが[i]、これでは、今起こっている問題を伝えたことにはならない。

 

[i] Bark at Illusions Blog 17/216参照