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北朝鮮の核・ミサイル開発:ボールは合衆国政府が握っている

 軍事的緊張が高まる北朝鮮と合衆国。NHKニュース7ニュースウォッチ9)は依然として、北朝鮮にさらなる圧力をかける必要があるとか、中国とロシアの協力が必要だという日米両政府の主張を無批判に伝えているけれども、グアム島周辺に弾道ミサイルを発射すると警告していたキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長が「合衆国の行動をもう少し見守る」と述べた今月14日以降、明らかにボールは合衆国政府が握っている。

  北朝鮮はこれまで一貫して、合衆国・韓国との平和協定締結(現在は休戦協定)による朝鮮戦争終結を求めてきた[i]。また北朝鮮はこれまで度々、北朝鮮への敵視政策の見直しや、朝鮮半島周辺での米韓軍事演習の中止を求めている(朝鮮戦争で合衆国に国を文字通り荒廃させられた北朝鮮にとって、朝鮮半島周辺での軍事演習は脅威に映る)ことから、キム・ジョンウンの「合衆国の行動をもう少し見守る」という発言が今月21日から予定されている米韓合同軍事演習を指していることは明らかだが、こうしたことを考えれば、合衆国政府が軍事演習を中止すれば、朝鮮半島の緊張が緩和される可能性が極めて高い。合衆国政府が、朝鮮半島の平和と安定、北朝鮮の核・ミサイル開発の中止を本当に望んでいるのなら、北朝鮮と対話をする気があるのなら、韓国との合同軍事演習を中止すべきだろう。

 NHKニュース7ニュースウォッチ9は、「国際社会の一致した圧力」が必要だとか「対話のための対話では意味がない」という日米両政府の主張を無批判に伝えるだけで、緊張緩和に向かう可能性の高い「合衆国が軍事演習をやめるべきではないか」という提案をこれまでのところ一度も行っていない。NHKキム・ジョンウンの発言を「今月21日から始まるアメリカと韓国の合同軍事演習を前に、トランプ政権の出方を見極める姿勢を示し、揺さぶりをかける狙いがある」(ニュース7、17/8/15)と解釈している。
 日本政府がよく用いる「対話のための対話では意味がない」という言い回しは、相手がこちらの条件を満たすまで「対話」に応じない、つまり交渉するつもりがないと言っているに等しい。対話する気がないけれども、その責任を相手に押し付けるために用いられている。ニュース7ニュースウォッチ9もほとんど伝えていないが、ASEANやEU、中国、ロシアなど「国際社会」は対話による解決を求めている。当然だろう。合衆国が1994年に北朝鮮への軍事攻撃を計画した際、在韓米軍司令部は最初の90日間で「死傷者は米軍5.2万人、韓国軍49万人、民間人の死者は100万人以上」に上ると予測している。現在北朝鮮核兵器保有しており、さらなる被害が予測される。対話を模索しない日本政府にアジアの平和や国民を守る気がないのは明らかだ。

 ニュースウォッチ9(17/8/18)は、21日からの米韓合同軍事演習を控えて、

有馬嘉男:「週明け21日からは、アメリカと韓国の合同軍事演習が始まります」
桑子真帆:「北朝鮮が反発している演習ですよね」
有馬嘉男:「北朝鮮の動きからいよいよ目が離せません」

とニュースを結んでいる。
 北朝鮮が反発することがわかっていても、NHKには「軍事演習を中止して北朝鮮と対話を行うべきではないか」という日本政府の意に反する提案をすることができない。

 

[i] 例えば、昨年7月6日、北朝鮮朝鮮戦争『休戦協定』を終結し『平和協定』を締結することを再度提案するとともに、『非核化協議』に前向きに応じるための次の5つの条件を提示した:①朝鮮半島のすべての核兵器の存在を公表すること、②韓国にあるすべての核兵器及び核基地を検証可能な形で撤去すること、③朝鮮半島及びその近傍に核兵器を配備しないこと、④いかなる場合もDPRK北朝鮮]に核兵器による威嚇を行わないこと、⑤核兵器を使用する権限のある部隊すべての韓国からの撤退を宣言すること」(『核兵器・核実験モニターピースデポ16/8/1)。しかし、当時のバラク・オバマ合衆国大統領がこれに応じるどころか、逆に北朝鮮経済制裁を行ったため、実現しなかった。