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── Media Watchdog Group

自分たちが伝えた事実を理解できないニュースウォッチ9

 ニュースウォッチ9NHK)は、合衆国のバラク・オバマ前大統領の核政策について勘違いしている。また、最近の核兵器を巡る世界の動きについても正しく理解していないようだ。

  ニュースウォッチ9(17/2/24)は、冒頭で

オバマ前大統領が掲げた核兵器のない世界。これに対してトランプ大統領は、アメリカの核戦力の強化に意欲を示しました」(キャスター、鈴木奈穂子

と述べて、ドナルド・トランプ大統領のロイター通信のインタビューから、「世界から核兵器が消えたら夢のようだが、他国が保有するなら我が国は1番になる」という発言を紹介。そして、鈴木が、

「(トランプが核兵器を増やすことになれば)オバマ前大統領がやってきたことって、何だったんだろうって気もしますよね」

と述べている。

 確かに、オバマは「核兵器のない世界」を「掲げ」ていた。しかし、彼は、実際には、核兵力の強化を図っていた。ニュースウォッチ9もこのことを知らないわけではない。オバマは、核兵器の「近代化」のために今後30年で1兆ドル費やす計画を承認したが、ニュースウォッチ9(16/5/27)もそれについて伝えている。
 合衆国政府が開発を進める「爆発規模が調節できる新型核爆弾」は、合衆国国防総省によれば「周囲の被害を最小限に抑え敵の軍事基地などを正確に破壊できる」が、それは「専門家」が指摘する通り、「被害が限定的になることで核兵器が使用しやすくなる」(ニュースウォッチ9、同)ことを意味する。
 ニュースウォッチ9は、自分たちでこうした事実を伝えておきながら、オバマ核戦略について理解できないようだ。

 オバマ核戦略について、さらに付け加えると、

The Obama administration has built more nuclear weapons, more nuclear warheads, more nuclear delivery systems, more nuclear factories.  Nuclear warhead spending alone rose higher under Obama than under any American president. オバマ政権は、さらに多くの核兵器、核弾頭、核兵器運搬システム、核兵器工場を作った。 核弾頭だけをとっても、オバマの下で、これまでのどの合衆国大統領よりも、その支出は増えた)A world war has begun. Break the silence, John Pilger, 16/3/20)

 また、国際社会が核兵器廃絶を目指して「核兵器禁止条約」を制定しようと動き出すと、オバマはそれを妨害した。

国連総会第1委員会で……採決される『核兵器禁止条約』の交渉開始決議案について、米国は自らが主導する北大西洋条約機構NATO)の加盟国に対し、棄権ではなく反対するよう文書で要求した」朝日16/10/27)

 「核兵器禁止条約」については、ニュースウォッチ9(16/10//28、16/12/12)も伝えている。
 昨年の国連総会では、「核兵器禁止条約」について、今年の3月から交渉を開始する決議案が採択された。日本政府や、合衆国などの核保有国政府などは反対したが、113か国がこれに賛成している(反対35、棄権13)。

 トランプの発言を受けて、ニュースウォッチ9(17/2/24)のインタビューに答えた日本被団協代表理事の箕牧智之氏は、「核兵器については、世界の流れは廃絶の方向ですよ」と述べているが、それは、間違いなく、こうした事実を指している。

 しかし、このインタビューを紹介した後、キャスターの河野憲治は、

「(トランプは)ロシアとの関係改善には前向きですから、オバマ政権が断念をしたロシアとの交渉を……再開して、核削減の流れができるということになれば、それはそれでいいと思う」

と述べている。
 「核兵器については、世界の流れは廃絶の方向」という事実を認識している発言とは思えない。