Bark at Illusions Blog

── Media Watchdog Group

ジャーナリストなら「徴用工」問題の基本的な事実を無視せず伝えろ

 毎日新聞(19/7/11)に歴史修正主義者のコラムが掲載されている。国家公務員共済組合連合会理事長の松元崇氏は、かつて自身が社外取締役を務めた三菱マテリアル株主総会で聞いた、「韓国の元徴用工の人たち」は日本の炭鉱で働いていたことを「誇りにしていた」という話を根拠に、「徴用工」問題は「事実とかけ離れた虚像」だと主張して、「事実を踏まえた歴史認識」に基づく日韓の対話を求めている。炭鉱で働いていたことを「誇り」にしている「元徴用工」の人がいたとしても、日本政府が大日本帝国時代に植民地の人々に対して強制労働をさせたという事実を否定することはできないのだから、松元氏こそ「事実を踏まえた歴史認識」が必要だが、人から聞いた話だけを根拠に松元氏が「徴用工」問題を否定するコラムを書くのは自由だ。否定できない事実をどれだけ並べても、合理的な判断をしない人間というのはいつの時代にもいるものだが、そんな彼らにも何かを言う権利はある。問題は、歴史に対して正直に向き合わなければならないマスメディアまでもが「徴用工」問題の基本的な事実を無視してニュースを伝え、韓国に対する日本政府の恥知らずな対応を支持していること。そしてその結果として、日本社会全体が日本政府や松元氏のような歴史修正主義者の主張が間違っているということに気づかずにいることだ。

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選挙が済んだら、デモに行こう

 7月21日に行われた参議院選挙は、議席過半数を獲得した与党の勝利で終わった。しかし選挙が終わったからと言って、市民の政治的役割が終わるわけではない。市民は選挙以外にも、デモや座り込みなどによる直接行動などで政治に参加することができる。選挙だけでは政治や社会は変えられない。市民の声を政治に反映させるためには、むしろデモなどによる直接行動が効果的だ。6月に注目を浴びた香港の抗議デモもそのことを示している。

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河野太郎曰く、日韓請求権協定で「個人の請求権が消滅したと申し上げるわけではございません」

 日韓請求権協定で「個人の請求権が消滅したと申し上げるわけではございません」──。日本の外務大臣河野太郎の昨年11月14日の衆議院外務委員会での答弁だ。国家間の条約で個人の請求権は消滅しないというのは国際的な共通認識であり、そのことは河野太郎に限らず、日本政府も認めてきた。しかし、それにもかかわらず日本政府は日韓請求権協定(1965年)で「徴用工」を巡る問題は解決済みだと主張し、河野太郎は「徴用工」問題で仲裁委員会の開催に求めに応じない韓国の駐日大使を呼びつけて、韓国大法院(最高裁)が日本企業に元「徴用工」への賠償を命じたことを念頭に、「国際法違反」の状況を是正するようにと恫喝した。そしてマスメディアは、またしても「徴用工」問題で最も重要で基本的な事実を伝えることを怠った。

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「増税やむなしの空気」を作り上げてきたマスメディア

 毎日新聞(19/7/3夕刊)は、消費が落ち込むのを承知で消費税増税に踏み切ろうとしている日本社会を、合理性に優越して日本人の判断を拘束するといわれる「空気の支配」について山本七平が論じた際に例に挙げた戦艦大和の無謀な出撃に擬え、現在の日本人は「増税やむなしの空気」に支配されていると危惧する批評家のコラムを紹介している。
 「増税やむなしの空気」──。ここで問題にしたいのは、このコラムのことではなくて、そのような「空気」を創り出してきたのがマスメディアだということだ。

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「日米同盟」破棄がトランプへの答えだ

 合衆国のドナルド・トランプ大統領が、日米安全保障条約は合衆国が一方的に義務を負う「不公平」なものだと主張して、その見直しに言及した。日本政府やマスメディアは、日米安保条約は片務的なものではないと反論し、「日米同盟」の重要性を強調しているが、これを機に、「日米同盟」が本当に日本や東アジアの平和と安定に役立っているのかどうか、考えてみるべきではないだろうか。

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