Bark at Illusions Blog

── Media Watchdog Group

欧米のやり方は国際社会の支持を得られず、ロシアの侵略を止めることもできない

 欧米諸国や日本の政府は、ウクライナに侵略したロシアを孤立させようと躍起になっている。しかし国連総会で行われたロシアに対する2度の非難決議はいずれも圧倒的多数の賛成(1回目は141か国、2回目は140か国、反対はいずれも5か国)で採択したとはいえ、棄権票も30か国以上を数えた(1回目は35か国、2回目は38か国)。国連人権理事会におけるロシアの理事国資格停止を求める決議については93か国の賛成で採択されたが、24か国が反対し、58か国が棄権。また合衆国政府が呼びかけているロシアに対する経済制裁に参加しているのは、米国の同盟国など一部にとどまる。アフリカや中南米で対ロ制裁を行っている国家は皆無で、アジアでも日本、韓国、台湾、シンガポールだけに限られる。

 マスメディアはロシアが「国際社会」で完全に「孤立」しているかの様な印象を与え、例外は中国などの「権威主義的」な国家だけで、彼らが制裁の「抜け穴」になっていると喧伝してきたが、実際にはロシアに対する欧米諸国のやり方はそれ程支持されているわけではない。
 なぜ、多くの国家がロシアの非難決議を棄権し、対ロシア制裁の呼びかけにも同調しないのか。

 国連総会の緊急特別会合の演説で、メキシコのペドロ・ルイス・ペドロソ・クエス国連大使ウクライナの多くの市民が犠牲になっていることに遺憾の意を表明した上で、NATO諸国によるウクライナへの軍事支援などロシアに対する挑発的な軍事的行動が、避けられたはずの今回の事態をもたらしたと主張。そして1999年のNATOによるセルビアへの軍事侵略を例に挙げて、世界各地で「政権交代をもたらすために主権国家を侵略し、内政に干渉」してきた米国とその同盟国の「偽善」と「二重基準」を批判し、「対話と交渉が紛争解決の唯一の手段」だと断じている(訳はキューバ大使館による)。
 非難決議に賛成しなかった国家も、対ロ制裁に参加していない国家も、ロシアによるウクライナ侵略を支持しているわけではない。ドイツの人権弁護士、ウォルフガング・カレック(Democracy Now22/4/8)が指摘するように、

国際法を自分たちの利益になる時だけ利用し、自分たちの利益に反するときにはそれに反対するという西側の態度を、グローバル・サウスの国々はもう受け入れない」

ということだろう。
 NATO諸国、特に合衆国が国際法を遵守し、民主主義の価値を尊重しない限り、合衆国の掛け声でロシアを孤立させることは不可能だろう。
 また、経済制裁ウクライナへの軍事支援などによっても、戦争をすぐに止めることは出来ない。経済制裁については、その効果に強く期待する専門家でも「本当の制裁の影響が出るくるのは、半年や1年後」だという見方を示している(慶應義塾大学・廣瀬陽子教授、NHKニュース7、22/4/2)。そしてウクライナへの軍事支援は、さらなる戦争の長期化を意味する。合衆国のロイド・オースティン国防長官は「適切な装備と適切な支援」があればウクライナは「戦争に勝てる」と言うが、ロシアが窮地に追い込まれれば、核兵器化学兵器を使うというのではなかったか。

 ウクライナを侵略したロシア政府が責任を問われるべきなのは当然だが、今すぐに必要なのは停戦だ。そしてそのためには、キューバ国連大使が言うように「対話と交渉」しかない。
 Bark at Illusions22/4/21)でも指摘したように、ロシア政府の言動やこれまでの経緯から、ウクライナの「中立化」やNATO不拡大の約束、つまりロシアにとっての安全保障が停戦の鍵となっていることは明らかだ。
 経済制裁によって罪のない世界中の一般市民を苦しめたり、ウクライナへの軍事支援によって戦争を継続させて犠牲者を増やすのではなく、ロシア、ウクライナ、そしてNATO諸国が、それぞれの安全保障の問題を満たすための妥協点を見つけるための交渉を今すぐに開始する必要がある。