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── Media Watchdog Group

どんなに疑惑が深まっても、NHKを見れば正しいのはいつも安倍晋三

 桜を見る会の前日に開かれた安倍晋三の後援会主催の夕食会について、会場となったホテルに対する野党議員の調査で、安倍晋三が国会で虚偽答弁を繰り返していた可能性が高まり、安倍晋三公職選挙法違反あるいは政治資金規正法違反の疑いが一層深まった。ところが公共放送を自負するNHKは、安倍晋三にとって都合の悪い事実を極力省略し、安倍晋三菅義偉官房長官の国会答弁に疑義を呈することもなく、安倍晋三が既に自身の疑惑に対する説明責任を果たしてしまっているかのような印象を与えている。

 立憲民主党辻元清美議員は、2013年と2014年、2016年に夕食会の会場となったANAインターコンチネンタルホテル東京に問い合わせ、「2013年以降の7年間に貴ホテルで開かれたパーティー・宴席について」確認した(辻元清美オフィシャルWEBサイト・活動ブログ、20/2/17)。質問内容は、

①貴ホテルが見積書や請求明細書を主催者側に発行しないケースがあったでしょうか。
②個人・団体を問わず、貴ホテルの担当者が金額などを手書きし、宛名は空欄のまま領収書を発行したケースはあったでしょうか。
③ホテル主催ではない数百人規模のパーティー・宴会で、代金を主催者でなく参加者個人一人ひとりから、会費形式で貴ホテルが受け取ることはありましたか。
④お問合せした1~3について、主催者が政治家および政治家関連の団体であることから、対応を変えたことはありますか。

 ホテル側の回答は、全て「ございません」だった。ANAインターコンチネンタルホテル東京は、①「主催者に対して、見積書や請求明細書を発行」しており、②領収書は「宛名を空欄のまま発行することはございません」、③「ホテル主催の宴席を除いて、代金は主催者からまとめてお支払いいただきます」と回答している。
 安倍晋三はこれまで国会で、①ホテルは安倍晋三の後援会事務所に明細書を発行しなかった、②領収書はホテルが発効した宛名が空欄のものを参加者個人に渡した、③会費は、ホテルとの契約主体である参加者個人が会場で支払ったものを後援会事務所が集金してホテル側に収めた、などと説明してきたが、それを覆す内容だ。17日の衆議院予算委員会辻元清美がホテル側の回答と安倍晋三の説明との矛盾を追求したのに対し、安倍晋三は、辻元清美に対するホテル側の回答は「一般論」であり、安倍晋三後援会主催の夕食会はホテル側の「回答には含まれていない」などと答弁して反論したが、その様子はニュース7ニュースウオッチ9も伝えている。

全日空ホテルに確認したところ、あくまで一般論でお答えしたものであり、個別の案件については営業の秘密にかかわるため、回答には含まれていないとのことでありました。私の事務所の職員は、明細書等の発行は受けていないとの事でありました。また領収書については上様としていた可能性はあるとのことでありました」ニュース7、20/2/17)

「私の事務所が全日空ホテルに確認をしたところ、辻元議員にはあくまで一般論でお答えしたものであり、個別の案件については営業の秘密にかかわるため、回答には含まれていないとのことであります」
「私の事務所の職員はホテル側と事前に段取りの調整を行ったのみであり、明細書等の発行は受けていないとの事でした。また領収書については、一般的に宛名は上様として発行する場合があり、夕食会でも上様としていた可能性はあるとのことでありました」ニュースウオッチ9、20/2/17)

 「一般論」も何も、ホテル側は「2013年以降の7年間」に開催された全ての「パーティー・宴席について」、問い合わせのような事例があったかどうかを確認する質問に対して「ございません」と回答しているのであり、しかも「政治家」や「政治家関連の団体」が主催者であっても「対応を変えたこと」はないと答えているのだから、この時点で安倍晋三の答弁に無理があるのは明らかだが、この答弁について、ANAインターコンチネンタルホテル東京は国会終了後の朝日新聞毎日新聞の取材に対し、「『一般論として答えた』と説明」したが「例外があった」とは答えておらず、「個別の案件については営業の秘密にかかわるため、回答に含まれない」と述べた事実もないと回答し、安倍晋三の答弁の核心部分を否定した(朝日 20/2/18、毎日 20/2/18)。

 しかしホテル側が17日の安倍晋三の国会答弁を否定したことが報道で明らかになった18日のニュース7ニュースウオッチ9は、この件について一切伝えなかった。19日になって、ニュースウオッチ9はようやく安倍晋三の答弁とホテル側の回答が矛盾していることを伝えたが、「野党側は、ホテル側の説明と安倍総理大臣の答弁に食い違いがあると改めて指摘」したと述べるだけで、17日の安倍晋三の国会答弁をホテル側が否定していることなど「食い違い」の内容については全く説明することなく、立憲民主党山井和則議員と菅義偉の次のような国会でのやり取りを紹介してニュースを終えている。

山井和則:「安倍総理が国会や記者会見で国民に説明をされてきたことが虚偽であったという疑いが高まってるんですよ」
菅義偉:「総理がここで答弁されたという事は、それは議事録にも残るわけでありますから、それは総理の責任の下に答弁をしているわけでありまして、2月17日の予算委員会で答弁した内容については、全てホテル側に確認を取った上でお答えをしたものであります」

 これでは疑惑が深まっているという実態が伝わらず、視聴者は、野党が既に説明が尽くされた問題をいつまでも疑っているだけで、安倍晋三の答弁に問題はないと結論付けてしまうのではないか。

 野党が矛盾を指摘しても、ホテルが安倍晋三の答弁を否定しても、総理大臣が答弁したことが常に正しい。そんなことがまかり通るなら、日本は独裁国家だ。そしてNHKは、それに相応しい放送局と言わねばならない。権力者を批判するための言論の自由は保証されているというのに。