Bark at Illusions Blog

── Media Watchdog Group

おい、マスメディア 韓国の国会議長はなぜ謝罪する必要があるんや

 韓国のムン・ヒサン国会議長が日本の総理大臣や天皇に対して性奴隷の被害者(元「慰安婦」)への謝罪を求めたことに日本政府は憤慨し、発言の撤回と謝罪を求めている。マスメディアも日本政府と一緒になってムン・ヒサンを非難し、「知日派」の韓国国会議長の発言で日韓関係がさらに悪化するのではないかと懸念している。しかしムン・ヒサンの発言は正しい。日韓関係悪化を本当に避けたければ、ムンの言う通り、日本政府が帝国時代の犯罪を認めて謝罪することだ。

 ムン・ヒサンは、合衆国ブルームバーグとのインタビューで、以下のように述べた。

「一言でいいのだ。日本を代表する首相かあるいは、私としては間もなく退位される天皇が望ましいと思う。その方は戦争犯罪の主犯の息子ではないか。そのような方が一度おばあさんの手を握り、本当に申し訳なかったと一言いえば、すっかり解消されるだろう」ブルームバーグ19/2/8)

 これに対して日本政府は発言の撤回と謝罪を求め、安倍晋三

「甚だしく不適切な内容を含むものであり、極めて遺憾である」、
「多くの国民が驚き、かつ怒りを感じたんだろうと思う……はなはだしく不適切」

と国会で答弁し、外務大臣河野太郎も、

「到底受け入れられない。極めて無礼な発言だ」

と述べるなど、憤慨している。

 しかし、なぜムン・ヒサンは謝罪したり発言を撤回したりしなければならないのだろう。日本政府やマスメディアはその理由について、納得のいく説明をしていない。
 日本政府は2015年の日韓合意で「慰安婦」問題は解決したと強弁しているが、日韓合意で「慰安婦」問題は解決していない。なぜなら、日韓合意は「慰安婦」問題を解決するためと言いながら、日本政府の謝罪や賠償を求める被害者の意向が反映されなかったからだ。当時の岸田文雄外務大臣安倍晋三の「お詫びと反省」の言葉を代読しただけで被害者への直接の謝罪はなく、日本政府が拠出した10億円は「賠償金」ではなく「支援金」だった。戦時中の性奴隷で苦しんだ被害者が、今なお救済されずにいるのだから、加害国側の「日本を代表する」人物が謝罪すべきだと言うのは当然のことではないか。
 また昭和天皇が「戦争犯罪の主犯」というのも事実だ。東京裁判で裁かれなかったから昭和天皇戦争犯罪者ではないという人がいるかもしれないが、周知の通り、東京裁判というのは全くの茶番だった。ポツダム宣言受託を決めてから米軍が日本に到着するまでの約2週間の間に日本政府が軍関係文書などの機密文書を徹底して焼却処分していたため、裁判は日本人関係者への尋問で得られた情報や関係者からの証言に依存せざるを得なかった。しかも日本の占領政策を担った連合国軍最高司令官総司令部GHQ)は、天皇の権威を利用して日本を支配するために最初から天皇を免責するつもりだったから、戦争責任は一部の軍人だけに押し付けられることになった。歴史は時の権力者や「アメリカ」が決めるのではない。ムン・ヒサンが昭和天皇は「戦争犯罪の主犯」と述べたことも間違いではない。
 もちろん現在の天皇に戦争責任はないが、日本の「象徴」である天皇に謝罪してもらえれば被害者は納得するだろうと考えることは理解できる。天皇の「政治利用」を問題にする声もあるが、これまでの天皇の活動を振り返れば、それは全く問題にならない。天皇は「慰霊の旅」でフィリピンやサイパンなどを訪れて慰霊を行ってきた(但し、ほとんどが日本人戦没者の慰霊であって、日本の侵略戦争による犠牲者への慰霊ではないが)。

 韓国の国会議長が天皇に謝罪を要求したからと言って、正当な理由もなしに発言を撤回しろとか謝罪しろと感情的に騒ぐのは、いかにも子どもじみている。
 暴力や人権侵害などの犯罪は被害者に対する加害者の謝罪と補償なしに解決しない。日本政府やマスメディアは、そんな基本的な道徳観さえ持ち合わせていないようだ。
 安倍晋三はムン・ヒサンの発言に「多くの国民が驚き、かつ怒りを感じた」と述べた。しかし日本が過去の犯罪に誠実に向き合おうとしないがために近隣諸国と良好な関係を築くことができず、国際社会での面目を保つためにいつまでも合衆国の言いなりになっている。そんな日本政府に「怒り」を感じている愛国者も少なくないだろう。