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── Media Watchdog Group

朝鮮戦争終結を目指すトランプを過小評価するニュースウォッチ9と朝日新聞

 朝鮮のキム・ジョンウン労働党委員長と合衆国のドナルド・トランプ大統領が共に前向きな姿勢で臨む史上初の米朝首脳会談。トランプが朝鮮戦争終結の可能性に言及するなど、朝鮮半島の非核化や東アジアの平和と安定に向けての大きな一歩となることが期待される。しかし日本のマスメディアの中からは、トランプに対して「非核化より朝鮮戦争終結を優先している」などいった批判の声が聞かれる。

 例えば、NHKワシントン支局長の田中正良(ニュースウォッチ9 18/6/7)は、

「気になりますのは、首脳会談が近づくにつれてトランプ大統領北朝鮮に対する物言いは融和的なものに聞こえるようになっていることです。大統領の関心は今、キム委員長との首脳会談をいかにして成功させるのか、この一点に集中しています。難航が予想されます非核化より、朝鮮戦争終結という歴史に名を刻む偉業の達成に関心が移っているように感じます」

と述べた後、非核化や日本の拉致問題、短距離・中距離弾道ミサイルの問題が「大統領の最優先課題ではなくなっている」という不安からか、朝鮮戦争終結に前向きなトランプを

「キム委員長との会談を、お知り合いになる機会とまで後退させてしまった」

と、酷評している。

朝日新聞(18/6/9)も、

「複雑で時間のかかる非核化の実現よりも、首脳の宣言で成果が示せる朝鮮戦争終結を優先」
「歴史的な成果を演出する狙いがありそうだ」

などと朝鮮戦争終結を目指すトランプを過小評価し、「ハードルを下げ過ぎている」、「重要なことは、(北朝鮮に)過大な譲歩をしないことだ」という合衆国の政府関係者の批判の声を紹介している。

 ニュースウォッチ9朝日新聞も、朝鮮の非核化と朝鮮戦争終結を別の問題であるかのようにとらえているけれども、これらの問題は表裏一体だ。
 朝鮮は朝鮮戦争(1950年~)で合衆国に国土を完全に破壊され、1953年の休戦協定以降も核兵器を含む合衆国の軍事的な脅威に常にさらされてきた。その脅威に対する抑止力として核兵器を開発してきたのだから、朝鮮としては合衆国の対朝鮮敵視政策が続く限り、核兵器を手離すわけにはいかないだろう。逆に朝鮮戦争終結して合衆国の軍事的脅威がなくなれば、朝鮮は核兵器を持つ理由がなくなる。実際、キム・ジョンウンは韓国のムン・ジェイン大統領に、合衆国が朝鮮を侵略しないと約束するなら朝鮮は核兵器保有する必要がないと語っている。
 つまり朝鮮の非核化と合衆国の対朝鮮敵視政策の中止や米朝平和協定の締結は切り離せないものであり、朝鮮戦争終結はそのための大きな一歩になる。そしてそれは日本にとっても東アジアの平和と安定につながり、拉致問題の解決や、増額が続く軍事費の削減も期待できるだろう。

 朝鮮政府はこれまで一貫して合衆国政府に対して平和協定の締結や敵視政策の中止を求めており、朝鮮側に合衆国と敵対する意志がないのは明白だ。
 ところが、これを拒んできたのが合衆国政府だ。脅威を煽って軍需品で儲けたり、世界支配のために今後もアジアに軍を駐留させたい合衆国に、本気で朝鮮戦争終結させて朝鮮に対する敵視政策をやめる意志があるのか。つまり朝鮮を非核化する意志があるのか。
 マスメディアはNHK朝日新聞のように朝鮮戦争終結を目指すトランプを過小評価するのではなく、そこに焦点を当てるべきだ。