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── Media Watchdog Group

「核を放棄する見返りに北朝鮮の体制を保証する」というのは間違っていないか

 朝鮮半島の非核化について、最近のマスメディアは、「短期間で完全な非核化を目指すアメリカ」と「段階的に非核化を進めながら、見返りとして経済制裁解除や体制保証を得たい北朝鮮」の溝が埋まらず「駆け引き」が続いているという見解でほぼ一致している。しかし核兵器は許し難いものであるとはいえ、何かの「見返り」に朝鮮の「体制を保証する」というのはおかしくないか。

 確かにキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長は今後もキム一族による体制が続くことを望んでいることだろう。しかし朝鮮が何よりも求めているのは、合衆国から「侵略されない」という保証ではないか。
 朝鮮はこれまで一貫して合衆国との平和協定の締結や関係正常化を求めてきた。日本や合衆国に住む私たちと同じように、朝鮮に住む人々にも、そこで平和に暮らし、幸福を追求する権利がある。ほとんどの専門家が認めているように、合衆国との戦争が終結していない朝鮮にとって核兵器は合衆国に対する抑止力であり、これまでの度重なる平和協定締結の要求からも、朝鮮に合衆国を侵略する意図がないことは明らかだ。国際法上、武力行使は、差し迫った侵害があり、他に手段がない場合に許される自衛権による場合と、国連安保理で認められた場合に限られている。合衆国に朝鮮を侵略する権利はない。何かの見返りに朝鮮の平和と安全が保証されるというのは間違っている。

 また、朝鮮の「体制を保証する」というのもおかしい。合衆国に朝鮮の「体制を保証」することはできない。
 第二次世界大戦直後の日本や西ドイツ・イタリアでの選挙への介入、ギリシャへの軍事介入、朝鮮戦争、イランでのCIA主導のクーデター、ベトナム戦争インドネシアでのクーデター支援、グアテマラ・ブラジル・チリ・アルゼンチン・ニカラグアグレナダパナマ・ハイチ・ホンジュラスなど中南米諸国への軍事侵攻やクーデター支援、アフガニスタンイラクリビアへの侵略や軍事介入……。第二次世界大戦以降だけを見ても、合衆国は国際法や現地に住む人々のことなどお構いなしに数多くの国で政権転覆を繰り返してきたが、合衆国に他国の政治体制を転覆したり保証したりする権利はない。朝鮮の体制をどうするかは朝鮮に住む人々が決めることだ。

 キム・ジョンウンは、合衆国が朝鮮を侵略しないと約束するなら朝鮮は核兵器保有する必要がないと表明し、拘束していたアメリカ人の解放や核実験場の廃棄など合衆国との関係正常化に向けて積極的な行動を取っている。朝鮮の核を放棄させたければ、合衆国は直ちに敵視政策をやめて朝鮮との平和条約を締結し、朝鮮を侵略しないと約束すべきだ。