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── Media Watchdog Group

合衆国による国際法違反の武力行使を正当化するニュース7

 NHKニュース7(17/4/9)は、合衆国政府によるシリアへの攻撃を非難する声として、シリアと「親密な関係」にある北朝鮮の声だけを伝え、合衆国政府や、攻撃を支持する日本政府の主張を何の疑問も差し挟むことなく伝えることで、明白な国際法違反である合衆国の武力行使を正当化している。

  ニュース7は、

「シリアのアサド政権の軍事施設を攻撃したアメリカのトランプ政権。これを強く非難した国があります。北朝鮮です」(アナウンサー、井上あさひ

とニュースを切り出し、北朝鮮の国営放送が、

「米のシリアへの攻撃は、主権国家に対する明白な侵略行為で、絶対に容認できない」

と、合衆国政府を非難する映像を紹介している。

 そして、ニュース7は、北朝鮮政府が合衆国政府による攻撃を非難する理由として、

「トランプ政権を牽制する狙いがあると思います。……北朝鮮とシリアは、ともにアメリカに対抗する立場で、軍事面での結びつきが強い友好国だからなんですね」(アナウンサー、井上裕貴)

と解説し、北朝鮮がシリアの与党バース党創立記念日に祝電を送ったエピソードを例に挙げて、両国が「かなり親密な関係」(井上あさひ)にあると強調している。

 まるで、合衆国政府による武力行使が正当なもので、それに異を唱えるのは、ならず者国家のアサド政権と友好関係にある、これまたならず者国家北朝鮮のような政府だけかのような印象を与えている。

 そして、緊迫した朝鮮半島情勢と、シリア政府の攻撃による市民の犠牲者について伝えた後、合衆国政府や、合衆国政府を支持する日本政府の主張を何の疑問も示すことなく伝え、今回の合衆国による攻撃を正当化している。

井上あさひ安倍総理大臣は、アメリカ軍がシリアのアサド政権に対し軍事行動を行ったことについて、我が国は化学兵器の拡散と使用を抑止するために責任を果たそうとするアメリカの決意を支持すると述べました」
安倍晋三(会見VTR):「私からは、トランプ大統領が、同盟国、世界の平和と安全のために強いコミットメントをしている、これに対して高く評価をいたしました」
井上あさひ「トランプ大統領は軍事行動に踏み切った理由について、女性や子どもを含む無実のシリア市民が多くの損害を被ったことを受けて、化学兵器が二度と使用されないように行ったものだと説明しました」

 しかし、今回の合衆国政府のシリアへの攻撃は、明白な国際法違反である。同じNHKニュースウォッチ9(17/4/10)が指摘している通り、武力行使が認められるのは、国連安保理の承認がある場合か、自衛権の行使による場合に限られる。また、化学兵器を誰が使用したかについても、現在調査中である。
 そのため、国連安全保障理事会では、前日のニュース7(17/4/8)が伝えているように、ロシア、ボリビアなども、合衆国政府の武力行使を非難している。また、「米国による一方的な軍事行動への反発も強く、明確に支持したのは理事国15か国中5か国にとどまっ」ていた(毎日17/4/8)。

 今回の合衆国政府の武力行使国際法違反であるという明白な事実については、北朝鮮の国営放送の方が、表現の自由が保障されているニュース7よりも明確に伝えているようだ。もちろん、政府にとって都合のいいことなら、北朝鮮でもいくらでも自由に話せるであろうことは想像できるが、日本政府や合衆国政府の主張を批判的に検証せず、明白な国際法違反を正当化しているようでは、ニュース7は、北朝鮮のメディアと変わらないのではないか。