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Bark at Illusions Blog

── Media Watchdog Group

地球温暖化対策に消極的な日本政府から目をそらすニュースウォッチ9

 地球温暖化対策の国際ルール、「パリ協定」が11月4日に発効した。ニュースウォッチ9NHK 16/11/4)は、パリ協定の概要と、今後経済成長の見込まれるアフリカのエネルギー事情について伝えているが、地球温暖化に対する日本政府の姿勢についてミスリードする内容だった。

  アフリカのエネルギー事情を伝える中で、ニュースウォッチ9は、中国の支援で火力発電所建設を進めるマラウィと、日本から地熱発電の支援を受けるケニアの事例を紹介している。

「(干ばつの影響で水力発電を稼働できず、深刻な電力不足に陥っているマラウィが計画しているのは)、温室効果ガスを大量に排出する石炭を使った火力発電所…このプロジェクトを進めているのが中国です」

「中国の企業はアフリカに進出し、石炭火力発電所を建設。その数は、計画中のものも含め、合わせて47基に上ります。建設には国ぐるみの支援が行われます。資金は中国政府系金融機関が…貸し出すため、アフリカ諸国は資金がなくても建設を進めることができるのです」

「一方、経済の成長と温室効果ガスの抑制を両立させようとしている国もあります。再生可能エネルギーの発電量が6割にも及ぶケニアです。原動力は先進国からの投資です。日本企業が地熱発電の最新の技術を提供、基となる資金は日本政府が貸し出します」

 なるほど。この事例だけなら、日本政府や日本企業が地球温暖化対策に積極的に貢献している印象を受ける。しかし、「温室効果ガスを大量に排出する」石炭火力発電については、日本も熱心だ。環境NGO 気候ネットワークによれば、現在日本国内で48基の石炭火力発電所の建設が計画されている。
 国外に目を向けると、「主要7カ国(G7)による石炭火力発電所や石炭開発への海外支援が、2007年から15年までの9年間で計420億ドル(約4兆6千億円)にのぼる」と試算されているが、「日本の支援は220億ドル(約2兆4千億円)と一番多い…日本は国際協力銀行を通じてベトナムの石炭火力などに支援。今後、100億ドルの新規支援を検討している」(朝日16/5/25)
 また、経済産業省は、日本政府が進める「質の高いインフラ輸出」の一環として、次世代火力発電の輸出を拡大させる方針だ。経産省は「環境負荷が高い従来の火力を世界最先端の日本の次世代火力に置き換えることで新興国に貢献できる」としているが(日経16/7/28)、石炭火力は、高効率の最新型のものでも天然ガスの約2倍の二酸化炭素を排出する。
 こうしたことから、石炭火力発電を重視する日本は、国際社会から批判を受けているというのが現状だ。

 また、ニュースウォッチ9は、パリ協定が「各国の事情に照らして」温室効果ガスの削減目標を設定することになっていることについて、

発展途上国はこれから経済成長が見込まれるわけですから…排出量が増える可能性もあるんですよという意味合いです」「これまで消極的だったインド、たくさんの発展途上国にも先進国と同じように席についてもらうということを重視したからこういう形になった」(キャスター 河野憲治)

と説明しているが、これは誤解を招く説明だ。途上国の中には、アフリカや島しょ国など、既に地球温暖化による深刻な被害を受けている国も多い。そうした国々が、より野心的で拘束力のある温室効果ガスの削減を求めてきた事実を無視している。また、そうした途上国の要求に消極的だった合衆国政府や日本政府の姿勢からも目をそらすものだ。

 日本政府の地球温暖化対策の方針については、石炭火力発電を重視していること以外にも、原子力地球温暖化対策として位置付けていることや、再生可能エネルギーの導入目標が低いことなどに対して批判の声が上がっている[i]

 確かに、中国が国内で火力発電を制限する一方で、その埋め合わせに海外で火力発電所を建設しているなら、それは批判されるべきだ。しかし、国家や政府の政策を正そうとするとき、最もそれができる可能性が高いのは自国政府の政策だ。NHKの批判は、まず日本政府に向けられるべきだ。

 

[i]日本政府の地球温暖化対策に対しては、例えば、環境NGO FoE Japanが、

  • 現在の温室効果ガス削減目標「2030年度に2013年度比26%」より野心的な削減目標(現在出されている各国の削減目標では、今世紀末の世界の平均気温の温度上昇を産業革命前の2度未満に抑えるという目標すら達成できない。日本は先進国としての歴史的排出責任があるため、より野心的な、責任に見合う目標を設定すべき)
  • エネルギー消費・温室効果ガス排出に占める割合の大きい産業部門とエネルギー転換部門に対する数値目標と規制(現在は業務部門・家庭部門のみ削減目標数値有り)
  • 原子力地球温暖化対策として位置付けない
  • 化石燃料からの脱却と再生可能エネルギー導入目標の大幅上方修正

などの提言を行っている。