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「夢の原子炉が夢のまま」-高速増殖炉もんじゅ 問われているのは核燃サイクルの政策そのものだ

 11月13日、原子力規制委員会は、高速増殖原型炉もんじゅの運営主体を日本原子力研究開発機構からかえるよう、所管する文部科学省に勧告した。

  NHKニュース7(13/11/13)は、

「・・・1兆円以上の事業費が使われてきた高速増殖炉もんじゅ、使った以上の燃料を生み出すことから、夢の原子炉と言われてきました。しかし運営主体の体質が問われる事態が繰り返し起きてきました」

と言って、ナトリウム漏れ事故の際の現場の映像を隠した旧動燃の隠ぺい体質や、試験運転中に原子炉内に装置が落下して運転が停止して以降、点検漏れなどの問題が相次いでいることを紹介している。

 勧告は原子力研究開発機構の安全管理能力を問題視するものだから、その組織体質への言及は当然のことだが、もんじゅ、さらには核燃サイクルの問題は、運営主体の体質だけが問われているのではない。技術的、経済的に破綻しており、その存続そのものが問われている。

 ニュース7も言及しているように、これまで1兆円以上の事業費(=税金)が使われているが実用化のめどすらたっていない。運転していなくても維持費に毎年約200億円かかっている(ニュース7は、行政推進会議の会合でも、もんじゅ関連予算に疑問の声が上がっているとして、紛らわしくもテロップでのみで「使用済み核燃料の運搬船が」と断りを入れて「ほとんど使用されていない、ここ5年間は一度も本来の用途で使用されていない…年間維持費が12億円かかっている」という意見を紹介している)。

 高速増殖炉の冷却材には水ではなくナトリウムを用いるが、ナトリウムは水と激しく燃焼反応するため、技術的に安全を確保するのが難しく、先進国の多くはすでに撤退しているのが現状だ。開発を進めているのはロシアと中国、インドだけだ。

 また、「唯一、実用化していたプルサーマルも先行きが見通せない。再処理費用をかけた分、MOX燃料はウラン燃料に比べ割高になる。これまで海外に加工を依頼して輸入したMOX燃料の価格は、通常のウラン燃料の7~9倍とも推計される。費用がかかりすぎ、使用済み核燃料などのゴミを減らす効果もほとんど期待できない」朝日、15/07/27)

 ニュースウォッチ9「一般の原発から出た使用済み核燃料にはプルトニウムが含まれ、青森県六ケ所村にある再処理工場で取り出されます。もんじゅはこのプルトニウムを燃料として再利用します。最大の特徴は発電しながら使った分よりも多くのプルトニウムを作り出せることです・・・」

と言うが、六ケ所村の再処理工場もまだ稼働していない。

 「これまで20回以上、完成時期が延び、建設開始からも22年がたった。建設費は当初計画の7600億円から2兆2千億円に膨らんだ」朝日、15/07/27)「来春に始まる電力の小売り全面自由化で地域独占が崩れると、お金のかかる再処理から撤退する会社が出てくるおそれもある。経産省は再処理事業の維持に向けて国が関与する仕組み作りを進めている」朝日、15/11/12)

 ニュース7の冒頭でキャスターの武田真一が述べている通り「夢の原子炉が夢のまま」なのであり、運営主体を変えたところで夢がかなうわけではない。