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── Media Watchdog Group

日米韓の軍事的な連携が東アジアの平和と安定に寄与するという幻想

 韓国政府が日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を日本政府に通告した。GSOMIAは共有した軍事的な機密情報の保護を義務付ける協定(情報の提供を義務付ける協定ではない)だが、日本のマスメディアはそれによって日米韓の連携が弱体化し、東アジアの安全保障に悪影響を与えると懸念している。そう懸念するのは、日米韓の軍事的な連携が地域の平和と安定に貢献してきたという思い込みがあるからなのだが、実際には、米軍の存在や米軍を中心とした軍事的な同盟・連携が、東アジアの緊張を高めている。

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昭和天皇が「反省」していたとしても、彼が戦争責任を果たしていないという事実は変わらない

 NHKは、初代宮内庁長官田島道治昭和天皇とのやり取りを記録した「拝謁記」を独自入手し、ニュース7は8月16日から4夜連続、ニュースウォッチ9は16日と20日にその内容について放送した。そのうちニュース7(19/8/16)とニュースウォッチ(19/8/16)は、昭和天皇が平和を望みながら戦争を止められなかったことなどを後悔し、国民の前で反省の気持ちを表明したいと強く希望していたと伝えている。しかしNHKは伝えることを怠ったが、昭和天皇が戦争について反省していたとは思えぬ事実が既に知られている。また、どんなに昭和天皇が反省という言葉を口にしていようとも、彼が自身の初めた戦争の責任を取っていないという事実は変わらない。

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「平和の少女像」に込められている思いは何か

 愛知県で開催されている国際芸術祭の企画展、「表現の不自由展・その後」が中止に追い込まれた事件は、日本社会のいくつかの問題点を改めて示した。ひとつは、言うまでもなく日本の表現の自由の現状についてだ。かつてローザ・ルクセンブルクが語ったように「自由とは常に、異なった考え方をする者にとっての自由である」。気に入らない作品が展示されているという理由で展覧会を中止に追い込もうとする社会は、自由ではない。展覧会に公金が使われていながら日本政府の意にそぐわない展示物があったことを問題にする人もいるが、権力者にとって好ましい意見を言うだけの自由なら、どんな独裁的な社会にも存在する。民主国家なら、公的機関こそ、多様な意見や表現を保障する義務がある。もうひとつ、この事件が浮き彫りにしたこととして問題にしたいのは、戦時の性奴隷を模した少女像への日本人の無理解だ。

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日韓の対立で問題にすべきは、強制労働の被害者に対する日本政府の対応だ

 「徴用工」を巡る問題で日韓の対立がエスカレートしている。韓国への輸出規制を強化した日本に対して韓国政府は対抗措置を発表、韓国では日本製品不買運動も広がっている。しかし対立の発端となった「徴用工」を巡る昨年の韓国大法院(最高裁)の判決以降の経緯を振り返れば、問題の責任の大半は日本側にあるのは明らかだ。日本政府も認めている通り、日韓請求権協定で韓国側に供与された無償3億ドル分の日本の生産物と役務は賠償ではなくて経済協力であり(例えば、1965年11月19日の参議院本会議での外務大臣椎名悦三郎の答弁)、国家間の条約である同協定で個人の請求権を消滅させることはできない(例えば、1991年8月27日の参議院予算委員会での外務省条約局長・柳井俊二や、2018年11月14日の衆議院外務委員会での外務大臣河野太郎の答弁)。日本政府はそれを承知で、日韓請求権協定で問題は解決済みだと嘘を言い、日本企業に元「徴用工」への賠償を命じた韓国大法院の判決は「国際法違反」だと主張して、民主国家として司法の判断を尊重する韓国政府への腹いせに、輸出規制強化という経済報復を行った。批判の矛先は日本政府に向かうべきだが、日本のマスメディアは韓国政府に問題の責任を押し付けている。

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NHKの受信料を拒否する十分な理由が、我ら市民にはある

 7月の参議院選挙で「NHKをぶっ壊す」ことを唯一の公約に掲げる「NHKから国民を守る党」が議席を獲得した。具体的な政策としては、料金を支払った人だけがNHKを視聴できる制度(スクランブル放送)の導入を目指しており、NHKの受信料不払いも呼びかけている。当のNHKは7月30日、「受信料と公共放送についてご理解いただくために」と題する文書を自身のウェブサイトに掲載し、「『受信料を支払わなくてもいい』と公然と言うことは、法律違反を勧めること」になると述べて、「明らかな違法行為など」に対して「厳しく対処」すると警告した。NHKは受信料不払いが法律違反であるかのように言っているが、放送法第64条は、テレビなどを設置した者に対してNHKとの受信契約締結を義務づけているだけで、受信料の支払いについては義務化していない。NHKは脅しともとれるこのような文書を出す前に、今回の選挙結果を重く受け止め、自身の放送内容が公共放送としてふさわしいかどうか検証すべきではないか。NHKの受信料の支払い拒否は正当な行為であり、そうするだけの十分な理由が市民にはある。

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